僕が絵を描きはじめた最初の頃、絵を描く動機は、いつも人にプレゼントするということでした。
結婚祝い、新築祝い、出産祝い、お礼など・・。
そんなことを繰り返しているうちに、少し空しくなってしまいました。
あげる側は、その絵を仕上げるまでの時間、本当に相手が喜んでくれることを想像しながら、自分の時間をその絵に費やすのです。
でも、もらう側にとっては、たしかに喜んではくれますが、たくさ〜んの嬉しいことのほんの一つでしかなりえないのかなぁ〜なんて思うようになってしまったのです。
だから、相手によって、自分の絵の存在意義を見いだそうとするのはよくないなぁと思うようになったのです。
それからは、自分のために絵を描くようになりました。
自分が喜べる絵を描こうと思ったのです。
でも、それを何年も繰り返しているうちに、やっぱり物足りなくなってきました。自分のためっていうのは、やっぱパワーがでてこないのです。
ふと、今日、ある一枚の絵のことを思いだしました。
もう10年近くも前のことでしょうか?
ある女の子から、ハガキサイズくらいで、ちゃんと額縁に入った手書きの絵をプレゼントされたのです。
当時、僕は黄色のバイクに乗っていたので、その絵には、小さく黄色のバイクが細かく丁寧に描かれていました。
その絵は、その女の子自らが描いたものでした。
もちろん、その当時、嬉しかったです。
今、その絵は、実家で眠っているでしょう。
でも、何故か今日、その絵のことを思いだしたのです。
そしたら、なんか、その当時のいろいろな記憶がよみがえってきました。
記憶というのは、手にとるこができませんが、でも、なんかとても壊れやすい尊いもののように思えます。
そして、その尊い記憶の中に浸っている時、全てがとても愛しく思えるのでした。
贈り物の本当の意味は、10年後、20年後になって、はじめて見えてくるのかもしれません。